前回の記事はこちら
早い企業はDXの次のステップへ
オムニチャネルコンサルタントとして、各社のDXを推進する逸見氏。最近では、オムニチャネル・OMOの環境整備を進める小売企業などから、新たな経営指標の策定方法や財務諸表の見方、これらを踏まえた新規・改善提案の立案といった、管理職・中堅・若手の各層に向けた研修を要望されるケースが増えているという。
「環境が整い始め、次は現場へ考え方を浸透させるフェーズに入ったということでしょう。たとえば、会員カードを電子化し、クレジット機能が付与されたハウスカードと顧客情報を一元化させたのであれば、こうしたデータからどのような示唆を得られるのかお伝えします。さらには、収集したデータを塊として見るのではなく、『顧客軸』で見て活用する方法を、実際に手を動かしながら覚えてもらうのです」
これまで店舗を主軸にビジネスを展開してきた小売企業の場合、店頭に立つスタッフの中にデータ活用の経験を持つ者は、現時点ではほとんど存在しない。しかし、彼らは企業内にデータ活用の文化や環境が存在しなかったから「触れるチャンスがなかった」ともいえよう。
「小売企業で店頭に立つスタッフは、実際に数値化された『データ』とは向き合った経験がなくても、顧客と直に触れる中でターゲットを理解し、常連さんの顔を覚え、彼らの望む商品を仕入れたり接客時に提案したりしています。つまり、脳内にデータを蓄積して肌感覚で分析し、活用しているのです。
こうした人々がデータを基にした思考法や活用術を身につければ、これまで経験から割り出していた独自の仕入れや販促の方程式を答え合わせしたり、実施した施策の結果を見ながらさらなる打ち手を考えたりといったブラッシュアップが可能になります」
小売店舗でのデータ活用は、特にPDCAを回せる頻度が少なく、十分な感覚を身につけにくかった季節商材などで効果を発揮するだろう。データを蓄積し、確実に売れる商品だけを仕入れるようにすれば、取り扱うSKU数を絞ることが可能だ。そうすれば、顧客目線では探しやすく、現場目線では売上が作れる店舗・売り場作りを実現できる。