物流一筋40年の著者が指摘する改善点
帳簿上の在庫数と実際の在庫数を正しく把握している事業者は、多くはないだろう。自社の商品がどのように管理され、発送されているのか。倉庫に足を踏み入れてみないと実態はつかめない。
EC事業者ならば、商品が顧客のもとにどうやって届いているのか正しく知っておきたいところだ。それが、良いパートナー選びにもつながる。
『EC物流改善メソッド』(山田孝治 著、幻冬舎メディアコンサルティング)では、物流倉庫の管理がうまくいかないと悩んでいるEC事業者に向けて、具体的な改善方法が紹介されている。著者である山田氏は、物流一筋40年のベテラン。そんな山田氏が、これまでの経験値を活かして、多くのEC物流で起こりがちな課題を洗い出す。
優秀な新人社員には倉庫で2年間働いてもらうべし
例えば、アパレルの一流企業に入った有望な新人に入社直後に「明日から物流・倉庫担当です」と告げるケースはほとんどないと思います。なぜ私がこんなことを切り出すかといえば、上手に倉庫管理をしていく秘訣はただ一つだからです。その新人が優秀な人材だと思うのであれば、少なくとも2年間、倉庫の現場で働かせてみるとよいのです。(P.42)
優秀な人材には、デザインや企画、販売などを任せようとするアパレルの事業者が多いはずだ。中には、倉庫の仕事を軽視している人もいるかもしれない。
しかし、自社の商品を保管している倉庫で働くことで、大切な商品が大切な顧客に届くまでの一連の流れを学べる。売り切れない在庫を抱えていないか、大量の返品が放置されていないかなど、事業におけるムダを知ることにもなるだろう。
BtoCであれば、顧客ごとに同梱物に違いがあるなど、細かい対応が求められる。そういう場合でも正確に商品を届けるために、EC物流では業務フローの整理や万全なオペレーション設計が必要だ。優秀な人材だからこそ任せるべき仕事といえよう。
EC物流の難易度は最上位?
eコマース、特にBtoCの物流は、難易度が上がる。山田氏は、「最も難易度の高い1ピース100の単品管理をパーフェクトにこなせるようになれば、100ピース1のロット管理などは、まさに朝飯前となります。EC物流の考え方を押さえておけば、あとはどのようにでも応用できるのです(P.76)」とまでいう。
誤出荷の防止、迅速な返品対応、帳簿と実在庫の把握など、EC事業者が対応すべきことは多くある。しかし、現場に足を運んで実態を理解し、適切な体制を作り上げれば、自社の売上は着実に上がっていくだろう。