「購入前」から「購入後」までが顧客接点
SBEVの行動を理解するために、本プロジェクトでは2つのアプローチを行った。
1つ目が、店舗スタッフへのインタビュー。実店舗のスタッフの中でも特に人気の高い「URBAN RESEARCH DOORS COCOSA熊本店」のスタッフにインタビューを実施した。
その上で2つ目のアプローチとしてn1観察を行い、SBEVの行動、EC来訪タイミング、閲覧ページなどを解析した。
まず行われたスタッフインタビューでは、3つのSBEVの特徴が明らかになった。
ECサイトで見たスタイリングを実店舗で確認する
ECサイトで見たスタイリングが、実際に自分に合うサイズなのか、色味は相違ないかなどを実店舗で確認する。
店内で購入予定のなかった商品を見つけて購入する
ECサイトで確認した商品の購入を目的に実店舗へ来店するが、その場で出会った商品を購入することもある。これには、スタッフによる接客が大きな役割を果たしている。
SBEVに分類されるユーザーが増加傾向にある
SBEVは、来店前に何かしらのウェブサイトを確認しているケースが多い。「i LUMINE(アイルミネ)」や「WEAR」など、アーバンリサーチが提供するプラットフォーム以外でもスタイリングが投稿されていることが一因と推測される。
この結果を受け、n1観察は、実店舗とEC行動を顧客軸で分析できる「OMOダッシュボード」とKARTE「ユーザーストーリー」を使って進められた。OMOダッシュボードで、実店舗の購買データとECサイトの閲覧データをユーザー単位で把握。ユーザーストーリーで、購買タイミングや回数などユーザー行動の詳細を見ていった。
そこで得られた11の発見のうち、本セッションでは1・5・11が解説された。
自分軸でレーベルを横断したい
これまでアーバンリサーチでは、ブランドやレーベルごとに違うターゲット像を描いていた。しかし、n1観察により顧客は気分に合わせて異なるブランドやレーベルを選ぶことが明らかになった。
商品企画時のターゲット像と実際のユーザー行動が一致しないケースは少なくない。そのため、「属性」のターゲティングから「状況」のターゲティングへと考え方を変える必要があるといえる。
「たとえば、30代の母親というターゲット像を作り上げても、実際には状況によって着たい洋服が違います。同じ母親でも、子どもと公園で遊ぶときに着たい服と、学生時代からの女友達と外食するときに着たい服は異なるはずです。ブランドやレーベルの垣根にとらわれすぎないほうが良いでしょう」(天田氏)
特集で気持ちを盛り上げたい
ECサイトの特集ページも、ユーザーの購買意欲を喚起。顧客を実店舗での購入へ導く役割を果たしている。
「1ヵ月前から2つの商品に興味を持ち、それぞれのスタイリングを何度も確認している男性ユーザーがいました。最終的には、前日に閲覧した特集ページが後押しとなり、2つのうち1つの商品に購入を決めているようでした」(尻江氏)
アーバンリサーチでは、PV数やECサイトでの購入数を特集記事の評価軸にしていたという。今回の分析結果により、特集記事がECサイトだけでなく実店舗でのユーザーの行動にも影響を与えているとわかった。
購入品のスタイリングが見たい
購入品のスタイリングの確認、あるいはサイズの再確認を目的に、商品購入後もECサイトを訪れるユーザーの存在が判明した。
商品を起点として、購入前から購入後まで顧客接点は継続している。尻江氏は、「スタイリングを充実させ、ECサイトに戻ってきたいと思うユーザーを増やすことが重要」だと話す。
今後アーバンリサーチでは、「マイページ」をユーザーのクローゼットとして次回購入の起点としていくなど、アイデアを深めていく考えだ。