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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

次なる顧客体験へ 大手企業の目線

パルコのリソースすべてを楽しめる場に ECサイトリニューアル・顧客ID統合がもたらす新体験に迫る

 創業以来、ファッション、アート、演劇などあらゆるジャンルのカルチャーを紹介し、イベントなども積極的に行ってきた株式会社パルコ。同社は、2023年3月16日に「PARCO ONLINE STORE」を共創型ECサイト「ONLINE PARCO」へリニューアルした。今回は、同社の執行役員 営業政策部、宣伝部、CRM推進部担当 林謙一氏と、CRM推進部 業務課長 櫻井愛氏に、リニューアルに対する想いやこれからの商業施設とECサイトの関係性、インバウンド戦略などを聞いた。

リニューアル始動時にコロナ禍到来 ファンを増やす体験設計へ

 「PARCO ONLINE STORE(以下、旧ECサイト)」のリニューアルが議題として挙がったのは、2019年。当初は、課題となっていたサイトスピードを改善しつつ、従来同様にリアル店舗を主軸とした設計を想定していた。

 ところが、リニューアルに向けて本格的に動き始めた2020年に、コロナ禍が到来。初期の緊急事態宣言時にはPARCOも全館休業となり、リアルチャネルのあり方、求められる役割が大きく変化していった。

「一斉休業のなか、活躍したのがECチャネルでした。コロナ禍という予期せぬ状況の変化により、eコマースの重要性を再認識したのです」(林氏)

株式会社パルコ 執行役員 営業政策部、宣伝部、CRM推進部担当 林謙一氏

 コロナ禍を契機に、様々な常識が変わった。これまでは、「イベント開催時に行列ができること」がステータスであり、「実際にリアル店舗やイベントスペースに足を運んでもらうこと」が目標とされていた。しかし、「三密の回避」「顧客行動の変化」を踏まえ、世間から求められたのは従来とは真逆の発想だ。

「『混雑は回避したい』『遠方からPARCOがある都心に足を運ぶのが難しい』といったように、お客様の行動パターンにも変化が見られました。すると、必然的にeコマースでの購入需要が高まり、チャネルとしての位置づけも高まります。当社としても、PARCOへの来店を最終目標とするのではなく、ファンを増やそう。来店できなくても、PARCOのコンテンツを楽しんでいただけるように舵を切ろうとなりました」(林氏)

ECサイト名変更で「ものを売る場」から脱却を図る

 当初予定していたシステム改修やバックエンドの強化だけでは、この方針は実現できない。ECサイトの役割そのものを変えていく必要があった。

「旧ECサイトをオープンした当初は、まだ業界全体がリアル店舗での販売を主軸としており、当社におけるeコマースは、リアル店舗が営業していない時間帯での販売活動を可能にする機能のようなポジションでした。

 しかしその後の時代の変化の中で、PARCOに出店するテナント様の多くは自社ECを持ち、ECモールにも出店しています。その上で、PARCOのECサイトに出店していただくには、独自の魅力づけが必要です。それは商品を購入していただくお客様に対しても同様だと考えました」(林氏)

 そこで同社は、コロナ禍以前から商業施設の運営だけでなく、エンタテインメント事業やアーティスト・クリエイターとの協業などにも注力してきた自社の特徴に着目。リアル店舗同様の商品を販売する従来型ECサイトからの脱却を目指した。

「パルコでは、IPコンテンツやクリエイターの方々とPARCOに出店するブランドをつなぐ取り組みも推進しています。これまでも店頭でコラボレーションしたイベント開催や商品販売を数多く手掛けてきましたが、この良さをECサイト上にも盛り込めるような仕組みを考えました。ただイベント関連商品やコラボレーション商品を集めてECサイトで販売するだけでなく、ファッション・アート・エンタテインメントなど、パルコが持つリソースすべてを体験できる場とすることで差別化を図っています」(林氏)

 旧ECサイト運用時にも、オンライン上でバーチャル展覧会を実施し、展覧会のグッズをeコマースで販売するなど、体験と販売を連動させた取り組みを進めていたパルコ。オンラインとオフラインの格差を埋め、体験のグレードを高める中で、「通販サイト」を彷彿とさせる「PARCO ONLINE STORE」では目指すべき方向性を正しく表現できていないと考え、「ONLINE PARCO」への名称変更を決断した。

「私たちにとっては、渋谷PARCO、池袋PARCOといった店舗ラインアップの中に『ONLINE PARCO』も存在するイメージで展開しています。これまではリアル店舗の補完をするECサイトだと捉えられていたかもしれませんが、今後はオンライン上でも様々な体験を提供し、お客様に楽しんでいただけるようにしたいと思っています」(林氏)

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この記事の著者

夏野 久万(ナツノ クマ)

フリーライター。制作会社などで勤務後、独立。紙媒体をはじめ、企業のオウンドメディアやビジネス系、ライフスタイル系メディア、コラム、エッセイなども手掛ける。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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