初めまして。「物流ライター」の田中なおです。前職は物流会社に14年間、事務職員として勤めていました。携わっていたのは3PL。「お客様から商品をお預かりし倉庫で保管、出荷指示に基づき納品までの手配を行う」という仕事です。現在は現場の経験を基に、物流に関する情報をキャッチして企業のオウンドメディアやニュースサイトで発信しています。
当連載では「“物流ライター”が教える EC物流キソのキソ」として、物流の視点から物流業務の基礎・コストの考えかた・外注のコツなど、押さえておきたいポイントをお伝えします。
EC事業者にとって、物流業務は面倒で手間がかかる作業でしょう。しかし、おざなりにしているとその分、物流におけるムダやミスが貴重な時間を奪うことになるかもしれません。「物流業務の基本がわからないままなんとなく進めている」「出荷漏れや宛先間違いの誤出荷が増えてきた」。こういった悩みを抱えている方々へのヒントになれば幸いです。
「自社発送」と「物流代行」 ふたつの選択肢
「物流環境の構築」というと、何だか難しく聞こえるかもしれません。簡単にいえば「どの商品が、いくつ、どこにあるのか」を管理して、受注情報と照合のうえ出荷、お客様に喜ばれる状態で届けるまでを構築すれば良いのです。選択肢としては大きく分けてふたつ。「自社発送」と「物流代行」です。
自社発送とは、商品を自社で発送すること。注文が入ってからの受注処理・商品の準備・検品・梱包・配送手配・出荷を自ら行います。多くの場合、在庫を社内などの手元に置くため、入荷から保管業務もともないます。対して「物流代行」とは、物流業務を外部に委託することです。倉庫に商品をまとめて預け、発送までの業務を物流のプロに任せます。
結論、まず「自社発送」で基礎知識をつけたうえで、規模に合わせて「物流代行」の活用をお勧めします。
理由は代行業者への完全な丸投げを防ぐためです。すべての外注に共通しますが、いざ委託して問題が起こったときに実態が掴めていないと改善のしようがありません。物流代行へ委託するにしても、物流の仕組み全体を見渡す知識は必要です。
知識をつけたうえで事業規模が大きくなってくれば、物流代行への委託を選択するのが良いでしょう。これまで物流代行の現場の携わってきた経験上、いろんなEC事業者を見てきました。片手間での自社発送は、物流代行以上に費用がかさむはず。実際、自社発送から始めたEC事業者でも、事業規模によっては「利益が取れているのだろうか」と疑問を持つほど手間がかかっていると感じていました。スタッフの採用や教育にかかる人件費や施設光熱費など、見えにくい費用も含めて比較してみてください。