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ネットが生んだ"See now, Buy now(いま見て、いま買う)”がファッション業界を変える?

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2016/04/18 12:00

 ファッションショーがネットでリアルタイム中継される現在、これまでのやり方では消費者ニーズに応えられないとして、米ファッション業界団体CFDAが改革に乗り出した。

ファッションショーを頂点とするビジネスモデルに変化

 パリやニューヨークで行われるファッションショーは、次のシーズンのトレンドを発信する場として世界の注目を集めてきた。しかし、ショーがネットでリアルタイム中継されるいま、その役割と運営スタイルに疑問が投げかけられている。

 ファッションの世界では、パリ、ミラノ、ニューヨークなどで年2回、複数のブランドが集中してファッションショーを開く。そこで発表された新たなトレンドは、テレビ・新聞・雑誌やネットメディアで紹介されて消費者のもとに届く。一方、小売業者からの注文を受けつつ商品が生産され、店頭を飾るまでに4~6か月を要する。

CFDAとボストンコンサルティンググループは業界関係者50名にインタビューを行った
CFDAとボストンコンサルティンググループは業界関係者50名にインタビューを行った

 今でこそ多くの人の注目を集めるファッションショーだが、もともとは関係者のための業界イベント。世界の先陣を切って行われるニューヨークファッションウィークでは、9月に翌年の春夏、2月にその年の秋冬コレクションを発表する。しかし、特別な顧客やバイヤー、報道関係者だけでなく、リアルタイムで消費者も見ることができる現在、ショーで見た服をすぐに買いたい消費者のニーズにも応える必要がでてきた。

加速する消費スピード

 ニューヨークファッションウィークを取り仕切る業界団体「CFDA(Council of Fashion Designers of America)」は、ボストンコンサルティンググループと調査を行い、その結果を3月に発表した。インタビューに応じたデザイナー、報道関係者、小売業者らを含む50名全員が「この市場は変革の時を迎えている」という見解で一致したという。

 レポートでは、2つの消費者トレンドがファッションビジネスに影響を与えていると指摘。1つは、"Buy now, Wear now(いま買って、いま着る)"という消費者行動。もう1つは、トレンドとデザインの消費スピードが加速していること。

 有名ブランドが才能あるデザイナーを起用し、色、形、素材を含めて提案した服はネットを通じて即座に拡散し、そのトレンドを採り入れた商品があっという間にファストファッションの店頭を飾る。もともとのデザインを発表したブランドの服が店頭で買えるようになるころ、それを見た消費者は「古い」とさえ感じるようになる。一方、商品の出荷は前倒しになり、消費者が感じる季節感とのズレが生まれ、値下げを早めている。こうしたサイクルを維持するために、デザイナーは大きなプレッシャーを背負うことになる。このようにショーを中心とした現状のシステムは多くの問題を抱えている。

季節に合った商品を展開するアイデアは業界関係者の多くが支持している
季節に合った商品を展開するアイデアは業界関係者の多くが支持している

 調査結果を踏まえて、CFDAが提案する新たなビジネスモデルは、デザイナーのクリエイティビティを守り、デザイン・生産・出荷の期間を短縮することなく、実際の季節に合った(インシーズン)の商品を展開すること。つまり“See Now, Buy Now(いま見て、いま買う)”を実現し、購買行動を活性化することである。そのため、「業界関係者」と「一般消費者」ごとに異なるアプローチが必要になる。

 ショーではその季節に合った商品を発表し、購買を活性化するイベントとして消費者を巻き込んで盛り上げていく。イベントも多様化し、ランウェイショーに代わるデジタルイベント、音楽のアーティストとのコラボ、卸や小売業者、EC事業者とのパートナーシップなどもありうるだろう。

 一方で、バイヤーや報道関係者向けとはこれまで以上に密接に連携する必要がある。商品が店頭に並ぶ6か月前に情報提供を行い、長期のメディア展開と商談を進める。その際、コレクションのすべては明らかにしないが、デザインのトーンやコレクションのテーマなど必要な情報を関係者限定で具体的に提供し、デザインがわかるイメージ写真はデザイナー側で慎重に量をコントロールする。変革は複雑でかなりハードルの高いものとなりそうだ。

一部のデザイナーはすでにIn-Seasonにシフト

 実際にどういう戦略をとるかはデザイナー自身が検討し、ブランドの特性を考慮して適切な方法を見い出す必要がある。ショーに集中していたリソースを再配分し、スケジュールを見直すための参考資料として、CFDAは4月14日、“The Future of NYFW:Guidebook - How to Transition to In-Season -”を公開した。そこでは、デザイナーに向けて4つの選択肢を提案している。

1. 現在のショー形式を維持
現在のショー形式を維持し、商品が店頭に並ぶ約6か月前に、小売業者と報道関係者向けの情報提供を行う。

2. ショーは行わず、業界プレゼンのみ
従来のような大規模なショーは行わずに、小売業者と報道関係者向けの小規模なプレゼンテーションやミーティングを実施して、製品とその背景にあるストーリーにフォーカスした長期にわたるメディア展開を行う。これは特に、若手デザイナーに有効。

3. ハイブリッドイベント
すぐに買える服と、3~6か月後に発売される服を組み合わせたプレゼンテーションを行う。従来のファッションショーに、“Buy Now, Wear Now”が可能なカプセルショーを組み合わせるかたちもありうる。

4. 季節に合わせたファッションショーと、事前の業界プレゼンおよびメディア展開
イベントやショーを季節に合わせた内容にシフトし、購買を活性化。商品が店頭に並ぶ6か月前に業界向けのプレゼンと長期のメディア展開を行う。

 1.が最も現状に近く、4.が理想形だ。しかし、一足飛びの変革は難しいため、CFDAはハイブリッドイベントを推奨している。一部のデザイナーはすでに対応を始めており、レベッカ・ミンコフは今年2月、ニューヨークファッションウィークでショーで春もののコレクションを披露した。トム・フォードとバーバリーは、今年9月にメンズとウィメンズを分けずにショーを行い、同様のアプローチを行うと発表。マイケル・コース、セオリーらもすぐに販売できる服をショーでフィーチャーするとしている。

 CFDAはワーキンググループをローンチして対話を継続し、米国のデザイナーを支援するとともに、パリやミラノなどのファッション業界団体ともこの問題について検討する。また、ニューヨークファッションウィークの運営やスケジュールも改革するとしており、今後の動きが注目される。



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