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イチからわかる、AIがECにもたらす恩恵と活用法

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2017/04/10 08:00

 ここ数年、ITの世界を飲み込む勢いで広まるAIや機械学習。時間のかかっていた作業が自動化され効率が格段に上がったことで、EC業界にも変革の時が迫ろうとしている。「ECzine Day 2017 Spring」では、この機械学習がECに及ぼす影響について、アクティブコア代表取締役社長、山田賢治氏による講演が行われた。

10年先の未来が来た。AIの進化のスピードは想像以上

 AI、機械学習、ディープラーニング。近年の登場以来、今や聞かない日はないほど浸透したこれらのキーワード。人の仕事が奪われるのではと言った警戒心を抱かれる一方、うまく活用できなければ取り残されるという脅威を感じる人も少なくないだろう。

 2017年3月に開催された「ECzine Day 2017 Spring」では、これら最先端技術を駆使し、マーケティングオートメーション(以下、MA)に応用している株式会社アクティブコアの代表取締役社長、山田賢治氏が登壇。「マーケティングオートメーション・機械学習で売上を上げる仕組み作り」と題し、デジタルマーケティングにAIが応用され始めている現状、そもそも機械学習とは何なのか、ECの世界はどう変わるのかが語られた。

アクティブコア代表取締役社長 山田賢治氏
アクティブコア代表取締役社長 山田賢治氏

 山田氏はまず、ディープラーニングの一例として、昨年世界的に話題になった「囲碁棋士 vs コンピュータ」の話題を取り上げ、その驚異の実力について語った。

「昨年、Google DeepMind社が開発した『AlphaGo』という囲碁ソフトが、韓国のイ・セドル棋士を打ち負かしたという衝撃的なニュースがありました。碁は非常に複雑なゲームのため、コンピュータが人間に勝つのは10年先だろうと言われていたにも関わらずです。AI、ディープラーニングの世界はそれほど急激に進化していると言えます。

 ただし、一口に『AI』と言っても、その種類は多岐にわたります。カリフォルニア大学のジョン・サール教授によれば、AIは大きく2つの種類があります。1つは、『コンピュータに人間同様の知能を持たせたもの』、もう1つは『これまで人間が行っていたことをコンピュータに代替させるもの』です。前者を『強いAI』、後者を『弱いAI』と言い、現在巷で話題となっているのは、後者のことを指します」(山田氏)

データ解析だけではない。「機械学習」の本当のすごさとは

 EC事業者がAIを利用してできることは何だろうか。その前に山田氏は、昨今ビジネス業界で活用されているAIの一種、「機械学習」について説明した。

「機械学習とは、端的に言ってしまえば確率や統計モデルによるパターン認識のことです。ニューラルネットワーク、ディシジョンツリー、クラスタリングなど、関連するアルゴリズムはいろいろありますが、まず本質を押さえてください。

パターンを学習し、未知のデータを分類・予測できる
パターンを学習し、未知のデータを分類・予測できる

 これまでは、ただ膨大なデータを読み込み、ひたすら分析することで精度を上げる方法が主流でした。機械学習では、機械が予測した結果を正解と比較し、その誤差からモデルを更新していくのが特徴です。正解へ向かうための学習モデルを再構築し、チューニングしていく。それをすべて自動で行うことが機械学習の本質です」

「自動で接客、レコメンド」 MAの基本とは

 専門家の視点から、AI、機械学習などの基本知識が展開された本セッション。ここからは、MAがEC事業にもたらす効果、および同社が展開するMAツール「アクティブコアマーケティングクラウド」での実例が紹介された。

「機械学習のECへの応用をお話する前に、まず基本的なMAの仕組みについておさらいします。顧客情報、売上データ、アプリやWebの行動ログなどを集め、ターゲット顧客を抽出してシナリオを作り、メールやアプリでオファーを出す。これらがMAの一般的な流れです。

 やはりECにおいてMAを活用する際に重要なのは、データの整合性です。商品・会員・注文データ、Web履歴などいろいろありますが、まずデータをひも付けることが何より先んじます。

 当社で行った新規顧客開拓事例では、DMPと連携し、性別、誕生日、初回・最終購入日などのデータを分析。潜在顧客に対し広告を配信するといった試みを行いました。また、自社サイトにしばらく来ていない、メルマガもオプトアウトしているいわゆる休眠状態のお客様のCookieを抽出し、SNSなどで広告を配信します。こちらもMAでこなせる分野です」

パーソナライズがカギ。既存顧客の掘り起こしにMAを活用する方法

「次は既存顧客対策です。この場合、オファーの内容を人によって変えるのが重要です。

顧客情報を利用し、購入へ誘導する確度が高いメールを送ることができる
顧客情報を利用し、購入へ誘導する確度が高いメールを送ることができる

 あるECサービスの事例では、まず商品発送5日後に、着荷確認や初期不良の確認も併せてメールを送付した後、次に商品ページを閲覧し購入しなかったお客様へリマインドメール。最後に、最終購入日から90日経過したお客様にレコメンドをするという施策を行いました。CVRはそれぞれ、3%、5%、6%となり、とくに最後のお客様に関してはクリック率が13%と、オファーはタイミングが重要であることがわかります。

パーソナライズされたフォローメールが、CVを向上させる
パーソナライズされたフォローメールが、CVを向上させる

 また化粧品業界のお客様の事例では、何で作られているのかという成分、何に効くのかという効能で訴求方法を変えています。これは、LPやクリエイティブを複数用意し、どのフローを経由したかによって、オファーメールの内容を変えるといった方法です」

 その他にも、「レコメンドに反応がなかった商品は自動的に除外する」「メール開封の有無など顧客の状態に応じたカゴ落ちメール」「クロスデバイスによるプッシュ」など、MAで実現できるCVRの改善方法について具体的に語られた。

機械学習をECで使うには。ターゲット作成で88%の精度達成も

 AIや機械学習、そしてMAの基本知識について披露された今回のセッション。最後に、両者をEC事業で活用するにはどうすべきかが語られた。

「機械学習をMAに応用する際、いろいろなパターンが考えられますが、我々は現在、ターゲットの自動作成、タイミング設定、レコメンド精度の向上、PDCAサイクルの高速化に取り組んでいます。

 具体的には、まず購入履歴やコンバージョンデータを学習させます。数回では精度が足りませんが、1,000回、10,000回と試していくうちに88%という成績を残すようになります。これらを、人間の手を介すことなく自動で回していくことに取り組んでいます。

学習に時間がかかるAIだが、予測は一瞬で可能になる
ABテストによるPDCAを自動化することで、効率的に結果につなげる

 また、ABテストの自動化にも取り組んでいます。これは計測して改善するという流れではなく、たとえば20%の対象にABテストを行い、効果のよかった方を残りの80%に適用するというやりかたです。テスト、検証、改善、実行という一連のサイクルを、すべて自動で行えるようになるわけです。

今後は精度の高いデータを持つ企業が有利な時代へ

 膨大なデータを収集、解析し、自ら試行錯誤を行う。これらを、人間とは比べ物にならないほどの速さで回し続ける機械学習の本質。売上や利益の向上を目指すECに限らず、デジタルマーケティング全般において、今後欠かせない存在になることはほぼ間違いなさそうだ。

 山田氏は最後に、機械学習をMAに応用する際に注意すべき点について語り、セッションを締めくくった。

 「何より重要なのは、『精度の高いデータを蓄積すること』です。どんなに優秀なアルゴリズムやMAの仕組みがあったとしても、データに信憑性がなければ、導かれた答えも信用できないものとなります。逆にそれさえあれば、PDCAを超高速で回してくれる機械学習は、EC事業者様にとっても強い味方となるでしょう」

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