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多角的な視点で「売れる商品」を見極める 先進的な日系企業が取り組むデータを活用したEC攻略法

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2017/04/24 08:00

 2017年3月17日に行われたECzine Day Springにて、株式会社アドウェイズによる講演が行われた。本講演では、「EC市場で何がどこでどのくらい売れているかわかる 競合と大きく差がつくECビッグデータの活用術とは?」と題して、同社のデータ事業担当執行役員、蘇迭(そ・てつ)氏が行ったセミナーをリポートする。

日中で3万社の利用実績があるEC販売データサービス

 株式会社アドウェイズは、2001年に設立され、2006年に東証マザーズに上場、現在世界11か国に展開している。主力となるインターネット広告事業のほか、近年力を注いでいるのがECビッグデータ事業だ。蘇氏は、2004年に上海の子会社アドウェイズテクノロジーの代表に就任後、最新技術を使った新規事業を手がけ、2009年にECビッグデータサービスを事業化した。現在は、日本と中国におけるECビッグデータ事業を統括している。

株式会社アドウェイズ データ事業担当執行役員 蘇迭氏

 アドウェイズは、EC販売データのサービス「Nint(ニント)」を提供しており、メーカー・小売企業向けの「Nint for Research」、楽天・Yahoo!ショッピング向けの「Nint for Ecommerce」、中国越境EC参入企業向けの「Nint for China」の3種類がある。同社が提供するデータは、ECモールに掲載されている商品ページ、ランキング情報、レビューなどの公開情報を収集し、独自の統計ロジックを掛け合わせたもの。カテゴリーごと、ショップごと、メーカーごと、商品ごとなどの売上推計を顧客に提供する。日本では楽天、Amazon、Yahoo!ショッピング、中国では天猫、淘宝、京東と、越境ECに強いKaolaに対応しており、日本EC市場の約50%、中国の約90%のデータをカバーしている。

 世界のEC市場全体で見ると約30%のカバー率だが、今後はアメリカや他国のデータも含め、5〜7割のデータカバー率を実現したいと考えているという。同社のECビッグデータサービスの利用実績がある企業は、日中合わせて3万社以上にのぼる。

日中を含めたECのビッグデータを構築している

「とくに、中国で真剣にEC展開を考える企業様にとっては、我々のサービスはなくてはならない存在となっている、と言えます」(蘇氏)

急成長する中国のEC市場からヒントを得る

 続いて蘇氏は、日中のEC市場を比較しながら、今後の日本EC市場の展望について解説した。世界のEC市場規模と成長率を見てみると、1位の中国が飛び抜けており、市場規模は2位のアメリカの2倍、成長率は3倍ほどもある。

市場規模において世界を圧倒している中国EC
市場規模において世界を圧倒している中国EC

 次に日本と中国の市場規模とEC化率を比較したグラフを提示。これを見ると、2012年頃の中国の状況と、現在の日本のEC環境が比較的相似していることがわかる。

EC化の傾向は、中国と日本で類似性が見られる

 続いて、日本と中国の商品カテゴリー別の売上を比較。中国では1位の服・靴・バッグ、2位のデジタル製品・家電、3位のインテリア・家具で、全体の8割を占めているという。

 越境EC市場になると、1位が美容関係、2位がマタニティ・ベビー、3位が服・靴・バッグ、4位が食品・健康、5位がデジタル製品・家電となる。このうち日本メーカーの商品だけにしぼると、1位の美容関連が5割以上、2位はマタニティ・ベビー、3位が食品・健康となっており、品質を求めて日本製品を購入していることがわかる。

中国人が日本に旅行に来て商品を買う場合と、ほぼ同じ傾向が見られます。大きな家電は越境ECではあまり買われていませんが、それ以外の商品は旅行中と同じような商品を買う傾向があるようです」

中国での日本製品のニーズは、インバウンド市場と似た傾向がある
中国での日本製品のニーズは、インバウンド市場と似た傾向がある

 次に日本EC市場のカテゴリー別シェアを見てみると、1位がデジタル製品・家電、2位が服・靴・バッグ、3位が食品・健康。1位、2位のカテゴリーと全体に占める比率は、中国とほぼ同じになっている。

 以上のデータを踏まえて、蘇氏は次のようにまとめた。

「日中を比較すると、現在の日本EC市場の状況が、中国の2012年の状況と比較的相似していることがわかります。2021年には、日本EC市場規模は25兆円、EC化率は10%を超えると予想されており、中国で2012年から現在までにどんなことが起きているかを見ていくことで、市場変化のヒントを得られるのではないか、という結論になります」

中国におけるEC販売データの活用と実績

 中国では、EC化率が5%を超えた2012年と、10%を超えた2015年のタイミングで、同社のEC販売データを活用する企業が大幅に増えたという。EC販売データを活用した企業の売上成長率と、天猫全体の売上成長率を比較すると、天猫の平均に比べて倍の成長率となっており、競合・マーケットに比べて圧倒的に業績を伸ばしていることがわかる。

販売データの活用は、中国ECでも急速に広がっている

EC化率5%を超えたタイミングで多くの企業様がデータ活用に興味を持ち、実際に結果を出しているということです。日本のEC化率は平均では5%ですが、一部のカテゴリーではおそらく10%や15%になっているでしょう。このタイミングでEC販売データを利用していかないと、今後の戦略を決めにくくなります」

4P分析×3C分析による戦略の組み立て方

 では具体的に、どのようなデータ活用が行われているのか。蘇氏は続いて、中国の事例とともに、実際のデータの活用方法を紹介した。同社のデータ活用の方法論は、4P分析と3C分析の掛け合わせだ。

天猫/淘宝のイヤフォン・ヘッドフォンカテゴリー規模推移(2014年~2016年)
天猫/淘宝のイヤフォン・ヘッドフォンカテゴリー規模推移(2014年~2016年)

 4Pは、マーケット/ショップ(Place)、商品(Product)、価格(Price)、広告(Promotion)、3C自社(Company)、競合(Competitor)、顧客(Customer)となる。

イヤフォン・ヘッドフォンにおける主要ブランドのシェア・成長分析(2015年~2016年):1

 事例として取り上げたのは、Sonyのイヤフォン・ヘッドフォンカテゴリー。天猫と淘宝の分析から、ベンチマークする競合と比較した上で、EC戦略を練るというのが課題だ。まずはマーケット(Place)の3C分析を行う。市場規模の推移、自社および競合ブランドのシェアと成長率、天猫と淘宝のシェアと成長率を比較分析する。

イヤフォン・ヘッドフォンにおける主要ブランドのシェア・成長分析(2015年~2016年):2
イヤフォン・ヘッドフォンにおける主要ブランドのシェア・成長分析(2015年~2016年):2

 これらから導き出される結論は以下だ。

  • イヤフォン・ヘッドフォン市場は引き続き伸長しており、中でも天猫の成長が目覚ましい。
  • 競合に比べSONYの市場成長率は高く、前年度シェア4位から2位となった。
  • ただし1位ブランドとの差は大きく、とくに市場成長が見込める天猫において1位の競合ブランドよりSONYの成長率が低い点は課題。
  • 新たな脅威として、2ブランドが大きく成長しているので、今後の動向には要注目。

 続いてショップ(Place)、価格(Price)、商品(Product)、広告(Promotion)、つまり4Pに関して、3C分析を行っていく。

自社ショップ売上分析(2016年)

 ショップ(Place)の分析では、ブランド売上全体に対する自社ショップ売上の構成比が、競合ブランドに比べ低いことがわかった。

価格帯分析(2016年)
価格帯分析(2016年)

 価格(Price)の比較・分析では、500〜999元と、2000〜2999元の価格帯において、とくに競合ブランドとの差異が大きくなっていた。

商品分析(2016年)
商品分析(2016年)

 商品(Product)では、耳掛け式の商品で、とくに競合との差が大きいことがわかった。

 広告(Promotion)では、競合ブランドがモールのショッピングイベントに合わせて大幅に売上を伸ばしていることに着目し、イベント前後の対応を確認した。「我々のツールを使えば、出稿先やクリエイティブなどのすべての広告内容と、価格調整の実態を確認することができます」と蘇氏。競合ブランドの動きを見てみると、イベントに合わせた積極的な広告露出と価格変更を行い、年間売上のヤマを作っていることがわかった。

 「このような4P分析と3C分析により、どこを優先して戦略を練ればいいか、客観的なデータから判断していただけるようになります

アドウェイズのECデータサービス「Nint」

 最後に、日本で展開するNintのサービスを使った簡単なデモが行われた。

 まずはメーカー、小売向けの「Nint for Researchを使って、楽天市場のデータを見ていく。Nintのツールを使うことで、カテゴリー別の市場規模のほか、1カテゴリー内の1〜151位までの各商品の売上高や平均単価などを確認できる。また1〜100位までの人気ショップの売上高、トップ20のメーカーの売上高、売れている価格帯や顧客の年齢層・性別なども見ることができる。

 人気ショップをより詳しく調べたければ、ショップ分析を行う「Nint for Ecommerceで、ショップの全商品の価格や売上高を、1日単位や月単位などで確認できる。広告分析の画面では、たとえば楽天スーパーセールの日に、あるショップがどんな対応をしたか、広告出稿やクリエイティブの内容、価格やポイント、商品名の変更といった詳細まで確認でき、それがどう売上につながっているかを分析できる、と説明した。

 最後に蘇氏は、セミナー全体を振り返り、下記のように締めくくった。

 「先ほどもご紹介したとおり、中国のEC化率が5%を超えた段階で、多くの企業様がEC販売データに対して興味を持ち、結果を出してきました。日本のEC化率も高まってきておりますので、EC販売データに興味を持っていただけたらと思います」

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